妖怪王
第七夜
デュエル場は閑散としていた。
それもそのはず、今夜はこの夏最後の花火大会。ちょうど開始のアナウンスが流れ、客達は皆海岸沿いの会場に集まっていたのだ。
この屋内デュエル場の内部はタワー状になった吹き抜けの空間になっており、四隅にそれぞれカードバトルシステムが設置されている。一度に四人までの対戦が可能、つまりタッグマッチやバトルロイヤルも出来る仕様だ。そう、これはあのバトルシティ準決勝戦で決勝の組み合わせを決めた時に使われたアレである。
いつもなら順番待ちの列が出来ているほどの人気アトラクションなのに、今日は誰もいない。アテムはがっかりした。
あと一勝で目的達成なのに今夜に限って対戦相手がいないとは。
その時、アテムの後ろから低い声がした。
「オレが相手になってやる」
振り向いたアテムはその長身痩躯の男を見上げた。
(海馬だ…)
栗色の髪に鋭く光る青い瞳、屋内だというのに何故か風にはためく白いバトルコート、
記憶と寸分違わぬ海馬瀬人の姿がそこにあった。
アメリカに行ったと思っていた海馬の登場にあわてふためいたアテムを尻目に、
「やるのかやらんのか、どっちだ!」
と、怒鳴りつけて正面のバトルシステムに近づく海馬。
その不機嫌な声に我に返って、アテムは急いで海馬の対面のバトルシステムをオンにした。
決闘の始まりだ。
アテムの胸は踊った。海馬とまたデュエル出来るとは夢にも思わなかったのだ。
自分が妖怪である事も、今は子供の姿をしている事も忘れて、以前と同じ闇の遊戯に戻った気分だった。
常のとおり、海馬は序盤から攻撃力の高いモンスターを召還してきた。その変わらないプレイングがアテムは嬉しかった。
一方、海馬も内心の驚きを隠せなかった。
部下から例のデュエリストが現れた事を聞いてこのデュエル場に駆けつけたが、その姿を見た時は正直落胆した。噂の天才デュエリストがこんな幼い子供だったとは。
だが、いざ対戦してみると、そのタクティクスは幼い子供のそれでは無い。
勘も良く読みが鋭い。なによりカードの引きが素晴らしくまさに『神がかったドロー』と言えるだろう。
(これは…子供と侮ったら負ける)そう海馬は思った。
外からは花火の音と客達の歓声が聞こえる。
だが、デュエル場では二人きりの真剣勝負が続いていた。
やはり海馬は特別だとアテムは思った。最近闘った相手とはレベルが違う。読み合いと駆け引きの小気味良さ、コンボの多様さ、召還するモンスターの能力の高さ、そしてなによりも決闘者としての誇りと気概を感じる。
今、アテムは全力を出して闘える喜びを思い出していた。
その時、海馬がついに青眼白龍を召還した。おそらく一気に勝負をかけるつもりなのだろう。周囲を圧倒する神々しい白銀の龍。
「この時を待っていたぜ!」
アテムは手札から一枚の速攻魔法カードを出した。
(これで勝てる!)
そうアテムが思った瞬間、
「待て!それは禁止カードだ」
海馬の声が響いた。
そう、そのカードは最新のルールでは禁止カードになっていたのだが、最近戻ってきたアテムはそれを知らなかったのだ。
魔法カードは無効になり、次の青眼の攻撃が通った事で、勝負はあっけなく終わった。
(妖怪王第八夜に続く)

